VR勉強会|ここでしか聞けない?古くて新しい“カイゼン”ビジネス最前線 ~もう始まっているSociety 5.0~

2018/6/20(水)、co-lab渋谷キャスト1Fラウンジにて、co-factoryを運営する株式会社SpiralMindによる勉強会が開催されました。
今回は、SpiralMindパートナーの大岡 明氏をお招きし、「ここでしか聞けない?古くて新しい”カイゼン”ビジネス最前線 ~もう始まっているSociety 5.0~」というテーマでご講演いただきました。
大岡氏は、株式会社ブロードリーフにて国内外の企業で活用されている改善ツールの企画開発、企業指導を担当。生産性向上、人の気持ち(モチベーション)マネージメント、カイゼン現場調査を専門とし、近年では働き方改革を踏まえたスタートアップ(イントレ/アントレ)についての研究も行っているそうです。また、SpiralMindのオープンイノベーションラボのパートナーとして参画いただいています。

今回は大岡氏に、「根拠あるカイゼン」についてと、その意図をわかりやすく説明いただきました。

手術のカイゼン例
大岡氏が所属する株式会社ブロードリーフにて、お医者様の手術のカイゼンに取り組んでいるそうです。「お医者様にも、手術の上手い方と下手な方がいらっしゃいます。上手い人は、なぜ自分が上手いのがわかっていません。下手な人は何が良くないのか理解していたとしても、どうしたら上手く出来るのかわかりません。時間をかけても、なかなか成果が上がらないということがよく起こっていました。そこで、生産性を上げるというアプローチで上手い人と下手な人の仕草を比較することになりました。手術をする流れは、悪いところにメスを当て、切って、縫うことです。しかし、この過程では何処からメスを入れるべきなのか、止血をすべきなのか等、様々な仕草があるのです。そこで、私は仕草を分析して価値のあるところだけを抽出する取り組みをしています。そうすることで、お医者様がカイゼンをきちんと見つけられるがが重要です。」とのことでした。この他にも、製造現場のカイゼンで4億円のコストを下げることができた例などを挙げられました。

もう始まっているSociety 5.0
Society 5.0とは、政府が掲げる社会のことで「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く、人類史上5番目の新しい社会とのことです。Society5.0の世界は、ドローン・AI・医療・介護・ロボット・クラウドサービス・自動走行などが挙げられています。大岡氏はこの定義を指して「この世界に挙げられているサービスで失敗したビジネスは1つもありません。すべて国に委ねるということではありませんが、このサービスは5年前に予測できたのです。なぜかと言えば、このような研究審査会やワーキンググループから、政府に案件が上がり公開されるので、それを閲覧していれば5年後の方針が見えるのです」とビジネスの方向性を検討する際の貴重なヒントを教えていただきました。

自動運転バスに、アバターサポートを提供した株式会社SpiralMind
株式会社ブロードリーフの研究子会社である株式会社SpiralMindでは、Society 5.0の1つである自動走行に関連した研究を行っています。SBドライブ株式会社の自動運転バスの車内にアバターを導入、人の顔の表情を検出し、遠隔地のCGキャラクターの表情へリアルタイムに反映させる「アバターテレポーテーション技術」を用い、アバターを介在した対話の効果を検証しました。この自動運転バスはとても安心して乗れますが、仮に、自動運転AIが乱暴な運転をしたとします。乱暴な運転をヒトがした場合は、怖い思いをするだけですが、AIの場合は降ろしてほしいとパニックになるでしょう。ヒトがいなくても安心できる要素の一つとして、実際の人間が操るアバターが乗客と双方向でナビゲートやサポートしてくれたら上手くいくかもしれません。好評価とともにいくつかの新たな課題も見つかりましたが、どのようなタイミングでインフォメーションを出すべきなのかという点については製造業のカイゼンにも関係します。と、大岡氏は語りました。

「ムリ・ムラ・ムダの排除」リーン生産方式から考える”IEのカイゼン”
それでは、少しお勉強タイムですと大岡氏は言いました。IEとはインダストリアルエンジニアリングの略称です。リーン生産方式によると「世の中の仕事は目的と手段のバランスがとれていると理想的」とされています。
例えば、軽トラックに2トンの荷物を積もうとした場合、手段より目的が勝ってしまうのでムリが生じます。2トントラックにミカン箱1つを積もうとした場合、目的より手段が勝ってしまうのでムダが生じます。この2つのバランスは明確なので現場で解決ができます。それに対して、ムラはムリなのかムダなのかわからないケースで企業の中で生じることがあります。ムラが生じた場合、ムリなのかムダなのかを分けていく作業がカイゼンビジネスの根っことなるでしょう。カイゼンを行う1つとしてECRSという方法があります。これは、排除、統合、置換、簡素化の順番で検討を行う方法です。大岡氏はいくつか例を挙げてこの方法についてもわかりやすく述べられました。

”カイゼン”の肝は、定量化である。
「さて、みなさん。ここで手を動かしてみましょう! 貴方は、設備保全の担当者だったとします。壁に穴を開けてしまった人から入電がありました。穴の大きさを聞くと千円くらいの穴を開けてしまったそうです。そこで、千円札の大きさと一万円札の大きさを紙に書いてください。」と大岡氏は参加者全員に実験をしてもらいました。その結果、正確にお札の大きさが合う方がほぼいないだけでなく、自分が認識しているお札の大きさは他人が認識しているお札の大きさとは違うのだということがわかりました。壁の穴の大きさを聞くときは何センチ×何センチですか?というようなムリやムダの生じない定量化が重要であると語りました。
また、レストラン「サイゼリア」の取り組みを例にあげました。「サイゼリアには”包丁”がありません。熟練者と初心者では、切り方によって料理の味が変わってしまったり、安全性の問題がでます。そこで、包丁のかわりにスライサーを店舗に置くことによって、熟練者でも初心者でも同じ質で料理ができるようになったそうです。広義に言えば、初心者でも障害者でも、どのくらいの作業ができたらサービスとして良いのかを定量化することが”カイゼン”につながるのです。」

ヒトでないとできないことを、いかに伝承できるかがキーポイント
技には2種類あるとのこと。それは、技術と技能。技術は言ってみれば、マニュアルに沿ったテクニック。技能は言ってみればスキルでありヒトでないとできないことで、テクニックより遥かに価値がある。しかし、ヒトの行動プロセスをくまなく伝えるのは困難である以上、”カイゼン”には、ヒトでないと出来ないことをいかに伝えられるかがキーポイントであるとのことでした。

まとめとして大岡氏は、山本五十六の名言を提示しました。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、
ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

最後に「カイゼンに通じる考えは、今にはじまったものではなく、昔からあったのです。こういうことは日本にあふれていて、それこそが日本の強みだと思います。」と締めくくられました。
今回の勉強会を通して、「自分の感覚を当てにせず、他人も含めた感覚を定量化することこそカイゼンにつながる。それは、社会全体の人々に対して日ごろから見守り心を配ることでもあるのだろう」と筆者は思いました。

さて、次回の勉強会は、
単なる3Dモニタを超えたVRモニタzSpace紹介と体験」です。

zSpace
http://jp.zspace.com/

詳細はリンクをご覧ください。今回は実際にVRモニタを持ち込んでいただき、アトリビュート株式会社、齋藤智氏にご紹介いただきます。体験も出来ますよ!お楽しみに!!

[株式会社SpiralMind:山田里奈]