対談・コラム
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#10 エナジーラボ|松岡一久氏|代表取締役

写真:エナジーラボ・松岡一久氏

松岡一久
Kazuhisa Matsuoka
株式会社エナジーラボ

co-lab千駄ヶ谷メンバー・エナジーラボは、まちづくり、コミュニティづくりのプロフェッショナル集団。今回はそのエナジーラボの代表・松岡一久氏をお招きし、co-labの新しい活用法を伺いました。

企業がco-labに入ることで実感できたメリットとこれまでのエナジーラボの仕事を振り返った上で語られたco-labの新しい活用法は、より開かれたco-labを予感させるグッドアイデアでした。

共感を軸に、施設と街の繋がりを紡ぐエナジーラボの魅力が少しでも伝われば本望です。松岡氏のインタビューをぜひお楽しみください。

インタビュー:田中陽明(co-lab運営企画)
構成:新井優佑(co-lab WEB PR)

「co-labであれば日常的にいろんな人たちと会える」
自分と物との遠近感をもう1回リアルな場所で紡ぐことが存在価値

田中:松岡さんからはちょうど独立するタイミングでお声掛けいただき、co-lab千駄ヶ谷に入会していただきました。co-lab千駄ヶ谷には社会起業系の方が多かったので、まちづくりやコミュニティづくりをしているエナジーラボさんにピッタリかなと思ったんです。まずは率直にお伺いしますが、co-lab千駄ヶ谷に入会して良かったことはありますか?

松岡:ぼくのいた北山創研(北山創造研究所)って割りと関係者の人たちの出入りが多い会社だったんですね。なので独立する際に一番危惧したのは、エナジーラボという10人くらいの会社を立ち上げたことで、人の出入りが少なくなり情報量が枯渇するんじゃないかということでした。田中さんには前もお話ししたかもわかりませんけど、六本木あたりに賃料の安い貸しオフィスがあって、知り合いはそっちに入っていたので、可能性としてはそっちに入るという選択肢もありました。でも、そっちに入ってしまうと人との出会いがすごく限られちゃうんじゃないかって気がしたんです。co-labであれば挨拶する程度ではありますが、日常的にいろんな人たちと会える。だから基本になる働く環境として良い場所かなと思いました。実際、グリーンズの小野さんや兼松さん、バウムの宇田川さんにはいろんなディスカッションに出てもらうこともできたので、そういうふうな意味で言うとメリットがあったように感じます。今でも、ピープルデザイン研究所でフープの武田さんにお手伝いしてもらっていたりもしますし。あともう一つはこういうふうな場所なので、人を呼びやすいんですね。エナジーラボのクライアントには東急不動産さんやJRさんといった大きな会社が多いんですけど、co-labなら割りと気軽に呼ぶことができますし、来ていただきやすい。みなさんにはここを割りと面白がっていただけるので、自分たちがやっていることを紹介するショールームのようなイメージで、この環境を使わせてもらっています。

田中:エナジーラボさんにはco-labのポテンシャルを最大限に引き出して上手に活用していただけていて、とても嬉しく思っています。まちづくりやコミュニティづくりの仕事をなさっていますが、具体的にはどのような内容の仕事をしているんですか?

写真:松岡氏とco-lab運営企画代表・田中
→松岡氏とco-lab運営企画代表・田中

松岡:今、池袋で作っている商業施設では、コミュニティとして価値を訴求していくような形を作っていっています。物単体の価値では、インターネット等を通して物自体がいろんな形に置き換わり、ディスカウントされていってしまうんですね。だから、いろんな仲間やコミュニティと一緒に価値を作っていく形にしていかないと、他との差別化が計れなくなっています。バウムの宇田川さんに誘われて、丸の内朝大学でレクチャーすることがあり、そこでよくお話しする内容なのですが、やっぱり今って選択肢が多すぎるんですね。それらがウェブ上に載っていると、自分にとって近い情報なのか遠い情報なのかが見えにくく、いかにもフラットになってしまいます。情報の遠近感がなくなって、どれを選んでいいのかわからないまま何となく、一歩も前に進めないことがすごく多いじゃないですか。婚活とか就活とかみんなそうですよね。本来はその物との距離間感、自分との縁の濃淡があるはずなんだけど、フラットだから選択する前に疲れちゃっている。だから何かもう1回、リアルな場所に行くでもして、縁を紡ぐような、情報に濃淡を付けてあげるような仕事をすることがエナジーラボの存在価値かなと思っています。

「ワールドカフェを通してアイデアの立ち上がりを実感できる」
「従来の商業ビルにするのではなく、長く続くコミュニティが必要」

田中:確かに、情報に濃淡を付けてあげることをリアルな場所で行うことは大事ですよね。それはどのようにして実現していくものなのですか? まちづくり、コミュニティづくりを通して得た方法論はあるのでしょうか?

松岡:田中さんにご紹介いただいた野村さん(株式会社フューチャーセッションズ 代表・野村恭彦氏)に1度座長になってもらって、エナジーラボの勉強会・TRC研究会で先生をしてもらったことがあるんですね。そのときのセッションに、すごいインパクトがあったんです。ワールドカフェを実践したんですが、参加した企業の方たち含め、そこで出てくる問題をテーマに多用な人たちの対話を行いました。その対話によってアイデアが積み重なっていくという実感が持てたんですよ。ですから今、私たちがやっているプロジェクトのほとんどは、ワールドカフェ形式で進めています。今一番必要なことって、いろんなことに対する合意形成であったり、外に対してネットワークを作っていくときのネットワークの作り方だったりするんですね。例えばJRさんのような大きな企業さんを含めたときに地域とどう連携していいかわからないっていう話が出てくるのですが、それもオープンな対話をすれば8割方は解決するんです。割とみんな対話する前に怖がって、なんとなく、対話しないまま進めてしまっているだけなんですね。やってみると結構前に進むところがあって、変な自信がつきますよ。

写真:エナジーラボの制作事例その1
→エナジーラボの制作事例その1

田中:実際、フューチャーセンターのやり方は日本でも活用していけそうですか?

松岡:すごく使えると思うんですが、唯一の欠点があります。それはアイデア出しまではできる、ということです。そのアイデアを実現するのは結構大変で、その先のメソッドがまだないから、それは北山創研のときに私がやってきたことで引き受けています。

田中:ワールドカフェと松岡さんの経験が合わされば、0から10まで形にできるわけですね。

松岡:そうなのかもしれないですね。

田中:それは画期的ですよね。そこまでの成功例は他にないんじゃないですか?

松岡:正確に言うと、うちでもまだ成功しているかどうかはわからないんです。その形でスタートしたプロジェクトの内、一番最初に形になるものは来年の秋なので。

そのプロジェクトを教えていただけますか?

松岡:先ほど話した池袋にできる「wacca」という商業施設です。従来の商業ビルにするのではなく、長く続かせるためのコミュニティが必要で、テナントと一緒にコミュニティを作っていかなくちゃならないと思っています。テナントが持っているファンをコミュニティ全体に還元していくようにしたいですし、綺麗事ではなく、商業ビルのある場所の周りとも一緒になってやっていかなきゃいけないんですね。とても小さなことですけど、周りの地域と一緒に映画祭を予定していたり、成功に向けて進めていっています。

「ワークショップ等を行うような『co-lab大学』にしたら良い」
「今必要なのは『サードプレイス』と『サードポジション』」

田中:話は少し飛びますが、co-labという看板を掲げて10年、クリエイターのコラボレーションを誘発したいという想いで運営してきて、co-labをまちづくりに投入すると経済として価値がちゃんと高まるような仕組みを作れたら、一つの完成系というか、価値を残せるなと思っているんですね。でも、なかなかどうやっていけば良いのかわからなくて……。これは相談になってしまうんですけど、co-labを街の活性化に起爆剤として使うにはどうしたら良いと思いますか?

松岡:うーん。あの、たぶん、一人がプロデューサーになって、「今回のプロジェクトは誰と誰」というふうに指名するようなやり方ではないと思いますね。みんながみんな賛同するかは別として、シブヤ大学のように、co-labに入会する方たちが外に対してワークショップ等を行うような「co-lab大学」にしたら良いかもしれません。入会する方々が個々に情報発信をして、その総体としてのco-labがあるようなイメージです。単にco-labに入居するんじゃなくて、co-lab大学に席を置いて研究活動もするし、いろんな人に教えるようなこともする。co-labに「交流」がひもづくような機能があれば、ただのシェアオフィスではなくなると思います。いろんなコミュニティを積極的に支援するコミュニティとしての名前になると思いますね。

写真:エナジーラボの制作事例その2
→エナジーラボの制作事例その2

田中:パブリック性を持たせるというか、いろんな人が自由に入れる要素をより出していったほうがいいということですよね。

松岡:大学ってすごく良くできたシステムで、専門の講義があれば、ゼミみたいなものもあるし、学生同士でサークルもできる。そして開かれているんですね。でも、co-labがシェアオフィスと言った途端、co-labの中に場を持たないと入ることはできない。co-lab大学ならスタッフとしてみんなが入っていける。そして外側にいる人たちも、自分たちの間合いを取りながら関わり方を考えていけます。co-lab大学にすれば、いっぺんに開かれると思いますね。……学長なんて、かっこええやん(笑)。

田中:学長には松岡さんになってもらいたいです(笑)。でも本当に以前も他の方から、「co-lab大学」っていう企画書を作って見せてもらったことがあるので、そういうアイデアはよくわかります。見え方が変わりますし、人の流れ方も変わってきますもんね。

松岡:最近、JRさんとも地域連携の話でしていることなんですが、サードプレイスっていう言葉を使うんですが、それって家と職場以外の場所があってもいいっていう意味なんですけど、実際に必要なのは「サードポジション」なんですね。父親とか子どもとか、あるいは会社員とか以外の街とのポジション、関わり方としてのサードポジション。確か、野村さんのセッションで出たアイデアなんですが、池袋の街に関わる人を増やすにはどうしたらいいかっていうテーマでワールドカフェをしたときに、「街の研究員」っていう立場を作ってあげたらどうでしょう? っていうアイデアが出たんです。研究員だったら、いろんなところにヒアリングをしにいってもおかしくないし、研究員としての成果を出版物にまとめることもできる。大学の名前で出版できるのと一緒で、単に自費出版するのとそれを登録できるのとでは違うじゃないですか。そういうふうな意味でも、やっぱり人の流れや情報の見え方ががらっと変わってくるんじゃないかなと思いますけどね。

(最後に)
まちづくり、コミュニティづくりを行う方は、co-lab内でも中心になって活動してもらいやすく、エナジーラボにもいろんな形でメンバーとのコラボレーションを行っていただいています。

クリエイターのコラボレーションを誘発するco-labの存在価値を具現化してくれている一人がエナジーラボであり、松岡氏と言っても過言ではありません。

そんな松岡氏からの「co-lab大学」の提案は、より開かれた場として機能するco-labの新しい未来像を感じさせるものでした。

もしもこの未来が現実となったとき、このインタビューを読んでくれたあなたとも繋がれていたら嬉しいです。