対談・コラム
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#02 矢野宏氏|アートディレクター

西麻布メンバー・矢野宏さんのインタビュー時写真

矢野宏
アートディレクター / グラフィックデザイナー

78年東京生まれ。桑沢デザイン研究所を卒業後99年アートディレクター/フォトグラファーのモート・シナベル氏に師事。2001年ビクターエンタテインメント・デザインセンターに入社。2008年中川優氏と共にN/Y inc.設立。2010年独立。KOKUYO「コクヨファニチャー総合カタログ」2011, 2012、大塚製薬「UL・OS」広告デザイン、2010 adidas-premiumstyle「lookbook」2009SSをはじめとする広告ビジュアルや、桑田佳祐、サザンオールスターズ、Def Tech等、名だたるミュージシャンのアートディレクションを手掛けている。
西麻布の設立より第一号のブースメンバーとして活用していただいています。
今回はco-lab西麻布(KREI)の特徴でもある、企業とクリエイターのコラボレーション事例として代表的な取り組みの一つとなる、2009年からco-labメンバーが表紙のアートディレクションを担当しているコクヨファニチャー総合カタログ※1について、2011年と2012年連続で手掛けられた矢野氏に、その経緯や思いなどを語っていただきました。

インタビュー : 小田潮美
2011.12.8

2012

2011年度版のペーパークラフトの表現を受け継ぎつつ
震災ムードをはげまして元気づけるようなビジュアルを

—まずは第一回目 ジャケット大賞 おめでとうございます!(インタビュー時、桑田佳祐さんのジャケットデザインが大賞に選ばれたばかりでした)

矢野:ありがとうございます。嬉しい反面、特にこれといって大きな変化もないのですが…(笑) でもありがたいですね。

—早速ですが、コクヨファニチャー2012年版の総合カタログをディレクションした経緯についてうかがえますか?

矢野:はい、もともとのきっかけは2011年版のコクヨファニチャー総合カタログのコンペティションでした。2010年の秋頃co-lab主宰の田中さんからのお誘いで参加させていただいて。翌年には、昨年の流れを汲んで提案したいというご要望で12年版のディレクションは直接ご依頼をいただきました。

2011_cphoto

—12年版ビジュアルについてご説明いただけますか?

矢野:今回は11年版にデザインしたペーパークラフトの表現を受け継いで、という意向がありました。そこで去年と同じ作家さんではなく、別の表現をする作家さんにお願いしようと思い、ロンドンのイラストレーター ユリア ブロウドスカヤさんにご依頼しました。

—彼女を起用したきっかけは?

矢野:お気に入り画像を集約している、サイト http://ffffound.com/ があって、デザインアイデアやフラッシュアイデアを日頃からストックしています。そこで調べて、という感じです。
コクヨ担当者からは「2011年版のペーパークラフトの表現を受け継ぎつつ、震災の影響で落ち込んでいるムードをはげまし元気づけるよう前向きなビジュアルを」という希望がありました。いくつかアイデアを出す中で、虹がかかり太陽が昇る明るい雰囲気をイメージし、こんな風にオフィスから上ってくる構図をお願いして描いていただきました。

—カラフルで楽しいイメージですね。

矢野:もともとコクヨさんには、かっちりとした実直なイメージがありました。そこを払しょくする意味で、11年版も今までのものに比べて派手なイメージにしたのですが、作風が独特でアート寄りな彼女を起用することで 12年版はさらに意外性を出しました。
1作目のような紙の表面の部分を使った、オーソドックスなペーパークラフトと違い、紙の断面部分ですべてを表現しています。

働く環境に対して面白い取り組みをしている企業。
もっと自由な表現があってもいいのではないか?

—2作目ということで、どのような思いがあったのでしょうか?

矢野:コクヨさんのイメージをくずしすぎてもよくないし、面白いものにしたいけれど、あまり奇をてらって共感できないものになってもしょうがない。そこをふまえつつ自分が関わるからには面白いものにしたいと思って取り組みました。担当者からも細かな制約などなく、信頼して自由にやらせていただきペーパークラフトのみの表現も受け入れてくださったので、結果的にやりやすかったですね。

—コクヨさんと取り組むにあたり意識されたことはありますか?

矢野:そもそもコクヨさん自体が、企業としてとても面白い取り組みをされています。
印象に残っているのが“エコバツ” ※2という、 自社製品に対しリサイクル不可能な素材を使って製品化することをやめて、すべてリサイクルできるようにするというものです。
エコライブオフィス品川※3にも伺って、あの実験的でひらけたオープンスペースに興味を持ちました。大きな木があったり、中庭があったりと、働く環境に対し面白いアプローチをしていると知り、もっと自由なことをやってもいいのではないか?と思いました。

—なるほど。コクヨさんが取り組んでいるプロジェクト、その職場環境や社風も実際に肌で感じて取り組まれたからこそチャレンジできた部分だったのですね。 そんなコクヨさんと実際に取り組んでみていかがでしたか?

矢野:普段は音楽業界の、雑多というか、わりと自由なスタイルで仕事をされる方とご一緒する事がほとんどだったので、とにかくきちんとされているな、という印象でした。
100年以上も歴史がありながら、従来のオフィス環境をどんどん変えて行きたいという柔軟さも持ち合わせている。たまに広告代理店の方とも一緒に仕事をしますが、それとはまた違った部分です。

co-labで新しいコラボレーションを生む為に

—他のコラボメンバーとの取り組み事例はありますか?

矢野:同じく西麻布メンバーのカトウさんから、武道館でライブを行うバンドのファン限定のイベントがあり、その撮影素材を利用したムービーが特典でプレゼントされる、という企画のパッケージデザインの話もいただいています。

—今後co-labでやりたいことを教えてください。

矢野:いろんな方がいるので、 普段は音楽関係のものが多いのですが、それ以外のジャンルもチャレンジみたいですね。まだ周りにすこし気を使ってしまってなかなか話す機会が作れないので、チャンスを伺っているところです。
あとは、一枚の絵で表現する事が好きなので、そのスキルを役立てられるならば、ジャンルにこだわらずどんどんやっていきたいですね。

(最後に)
西麻布でコクヨさんと企業という垣根を越えて協働しているこの場所ならではの取り組み事例をご紹介させていただきました。具体的な取り組みを知ることで単純にコラボレーションしているだけではなく、同じ建物の中にいて共存するコミュニティ自体が与える影響についても考えさせられましたし、まだまだこのような新たな働き方についてのヒントや可能性が沢山あると思いました。今回ご紹介した事例以外にも各拠点にて個人クリエイターが意識して交流を深め、新たなコラボレーションを進行中です。そこからまた触発され良い連鎖反応が広がっています。今後もインタビューやケーススタディの中で沢山の事例をご紹介していきたいと思います。

※1 コクヨファニチャー総合カタログ
2009年は同じく西麻布のデザイナー南部隆一さん(当時は三番町のメンバーであり、春蒔プロジェクトにも参加)と、元三番町メンバーであるソウルデザインの鈴木大輔さんが共同で担当していました。表紙にグリーンが配された椅子をメインにしたデザインで、それまでに内製していたビジュアルの傾向とはまた違ったデザインに仕上がっています。
2009表紙

※2 エコバツ http://www.kokuyo.co.jp/csr/ecox/
地球温暖化が言われ始めた2007年、コクヨがいち早く、環境への取り組みを強めることを決断したひとつの取り組みが、エコバツマークの採用。環境配慮に欠けている自社商品にバツを付け、3年間で環境配慮商品を100%にし、すべてのバツをなくす。その目標は実現し、2011年度版カタログからコクヨの商品はエコであることが当たり前となっています。

※3 エコライブオフィス品川 http://www.kokuyo.co.jp/creative/ecooffice/
ガマンすること、減らしていくこと。そんなエコロジーに対する概念を超えてコクヨが提案する 創造するエコロジー「eco+creative」をテーマに創造的な働き方を生み出す為の実験オフィスを運営。単なる省エネ化やコスト削減ではなく、よりクリエイティブで生産的なエコを提案するための様々なチャレンジを行っています。