対談・コラム
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#03 ビオピオ|兼松佳宏氏|greenz.jp 編集長

ソーシャルデザインで時代を牽引するgreenz.jp編集長に聞いた
「これからのクリエイターとコミュニティデザイン」の話

兼松 佳宏
Yoshihiro Kanematsu
株式会社ビオピオ取締役/クリエイティブディレクター

大学卒業後、企業でデザイナー、クリエイティブディレクター業を経て2006年に独立。その後Whynotnotice inc.を立ち上げ、フリーランスとしての活動を開始。greenz.jp創設時にはデザイナーとして参加し、現在運営企業である株式会社ビオピオの取締役に就任。持続可能でクリエイティブでわくわくする社会を目指すをモットーに、メディア、イベント・スクール運営、企業コラボレーション、書籍編集などマルチに活躍されています。
greenzはまた、始まったばかりのco-labの入居者でもあり、重要な影響を与えてくれた存在です。ソーシャルデザインのシーンの渦中の人、兼松氏の素顔に迫り、これからのクリエイティブやコミュニティづくりに役立つヒントを伺いました。

(インタビュー:田中陽明)

greenzのはじまりやバックボーンについて

—ここ最近、社会全体でソーシャルが注目されて、メディアの中でもgreenzがすごく重要な存在になっているけれど、2006年、やり始めた頃ってどんな感じでした?

co-labには約半年位入居していましたが、その年の3月、beegood cafeのシキタさん (シキタ純) がメディアをやりたいと言い出したのがはじまりで、シキタさんと鈴木奈央のほうでソトコトでできなかったことをやろうって言ってやってたんです。その年の終わりにお金が回らないからやめようって話になったときに「続けたい」って言った若手を引き取って始めたのが今のgreenz.jpでした。コアメンバーが7人位いたこともありますが、今は男だらけ4名です(笑)。

—4人でこのメディア配信力ってすごいですよね!

基本、編集長の僕と森くん (森惇哉) っていうフリーライターの2人でまわしています。小野くん (小野裕之) っていうのが営業周り担当で奈央くん (鈴木奈央) は発行人という象徴的な立場で、基本的にそれぞれ4人とも人としてメディア力があるというか、なんかインフルエンシャルな人たちなんですよ。
今は僕の関心事がgreenz全体の雰囲気になっていて、あと奈央くんの関心事も少しあって、森くんのも少しあって。僕らはちょうど年齢がばらけているので、20代、30代とそれぞれの関心事を気にしていくと、今みたいな雰囲気ができるかなと思います。

—兼松くんは、フリーランスやgreenzの活動を通してソーシャルイノベーションとクリエイティブの掛け合わせをやられてきたと思いますが、もともとのバックボーンはなんでしたか?

僕は元WEBデザイン出身で、大学ではフランス文学部専攻で、えせヒップホップとかやってました。1997年NPO法がはじまった頃、当時それがひと巡りして「かっこいいNPO」ってそろそろ必要なんじゃないとみんな言い出したり。そんな頃、ホームレスみたいな格好してラジオ担いでヒップホップ流しながらゴミ拾いをやるというプロジェクトがあり、それをみて「すごいかっこいい!」と思ったんです。この「スカベンジャー」というプロジェクトがまさにルーツです。
その後、絶滅危惧種がとかCO2の問題とか社会の問題を知っていくほどにドヨーンとなりました。でも知ることも大事なんだけど、何もできずドヨーンとしてるだけではもったいなあとも思いだし、スカベンジャーがやったように楽しく人を巻き込み、クリエイティブな方向でなんとかしたいと思って作ったのがgreenzです。

最近の活動・関心など

—ソーシャルイノベーション×クリエイションで見えてきたことってどんなことですか?

2006年「不都合な真実」が出た頃、僕らもいわゆる「エコ業界」としてくくられてました。当時は「ソーシャルイノベーション」=「エコ」みたいな、環境至上主義的風潮が強くて違和感がありましたね。最近は「=エコ」だけじゃないって方向にようやくなってきていて。そんな中、個人的なモチベーションからソーシャルイノベーションをやってる事例が面白いんですよ。例えばゼクシィにいた子が「結婚式になんで300万つかわなきゃいけないんだ」って思いからアウトドアウエディングなんていうのが生まれたり、シャボン玉を喫煙所のかわりに設置してパブリックコミュニケーションの誘発を試む「東京シャボン玉クラブ」という団体がいたり。彼らは社会問題の危機感をあおるだけじゃなくて、解決策を見つけてなんとかしたいという個人の思いが基になっているんです。そういう個人的な思いから始まる活動を「マイプロジェクト」と呼んでいて、特に注目して取り上げてきました。
クリエイティブって今まではデザインとかアートとか一部の世界だけだったと思いますが、今は普通の事務の人が目覚めて企画をクリエイトしたりと広い意味でのクリエイターが増えて来ていると思うんですよね。

—僕の場合メディアアートの活動の中から社会事業家と知りあうようになって、広い意味でのクリエイティブなところでデザイン表現の必要性を感じている人たちとの接点が最近生まれ始めた感じで。これからそういう部分の接点をどんどん作りたいなと思いつつco-labを今やっています。co-labの入居者にIBS公共未来塾という社会起業家支援団体がいて、僕も支援プログラムの審査員をやっていて、社会事業家になりたい人が実際に多いなあと実感しています。そこでもやっぱり、個人的動機が強くて情熱の強い人が持ってくるアイデアは通りやすいですね。

今までは情熱って空回りするものという感じだったけど、なんか震災後は特に変わった気がします。今の時代は個人の強い動機や想いがないとストーリーテリングできないし、社会事業として「共感」から始まらないとお金が集まらないし。アイディアだけじゃなくて強い個人の情熱がないと実現が厳しい。

—greenzとしては、今どんなことをしてるの?

僕ら2011年6月からgreens school Tokyoっていうのをはじめていて、第一弾は『コミュニティデザイン&まちづくり学科』と題し、30人ぐらいで連続講義を行いました。
その講義を通して、コミュニティデザインって自分なりになんだろうって考えたんですが、コミュニティとは人生のセーフティーネットではないかと思うんです。

—今の若い世代って住まいでもなんでもシェアするのが当たり前にあったりして。

シェアのような価値観がどんどん広がっていくとなるとお金の代わりに安心を担保するのは、コミュニティじゃないかなと。重要なのは誰かと合う頻度だったりじゃなくて、互いの温度をいかに保っていけるか、その温度が可能性につながっているんじゃないかなと思い。マイプロジェクトだって誰かが打ち出すだけじゃ広まらなくて、周りに共感しくれて推進してくれるコミュニティが必要になる。僕がコミュニティデザイン学科をやったことも、自分が生き抜くために自分の周りにコミュニティを作ったことの実践でもあったり。
そんな風に講義をつくる立場も経験しながら、ソーシャルデザインやコミュニティデザインといったテーマを最近になって自分の言葉で語れるようになったなあと思います。

—co-labもクリエイターのためのコラボレーションシェア―ドスタジオであり、コミュニティとしてやってきたつもりだけれど、兼松くん達がいた頃は方向性が定まりきれていない所も多くて、今更ながらすみません。当時は場所を維持するのが手一杯だったりしていて(笑)。で今は徐々に拠点をふやしながら、それぞれのコンセプトをたてるのにも慣れてきて、やっとそれぞれ集団として何か新しいものを生み出せるよう下準備が整ったところです。

クリエイターだけのコミューンとかってある意味つまんないんですよね。「最近どう?」とか安い印刷屋の話だけになっちゃうんだけど(笑)。子供とかいたりすると逆にいいのかなとか、おじいちゃんいたりするといいのかなとか、職業よりも人間としての近さがこれからもっと可能性になるんじゃないかなと。で、後は起こる事は自然に起こっていくというか。

—実は今、渋谷で一棟まるごとクリエイタービルを建てる計画があって、上は住居でオフィスで制作工房やギャラリーやPRスペースもついていて、託児所なんかも入ったらいいねとかあったり。そこまで徹底してコミュニティの環境と仕組みが作れると新しい基準も生まれるのかなと。誰もがクリエイターであるという広い意味でのクリエイターズコミュニティってあまりない。いつかそういう場を作りたいなと思ってます。

これからのこと

—greenzは、これから更に何を仕掛けようとしているんですか?

最近、greenzのこれまでの集大成とも言える、「ソーシャルデザイン」という本を出したばかりなんですが、greenzとしても取りこぼしている事案がまだまだ沢山あります。アンテナを全国にはっていくイメージで編集者のネットワークを拡大したいと思っていて、そのためにgreenzのopen化を目指そうと思ってます。ゆくゆくは会計もオープン化し、greenzの非営利化〜NPOを作る予定だったり。
で、更にオープン化の先はと言うと、芸能プロダクションみたいになっていくんじゃないかなと思っていて。マイプロジェクトをやっている人たちに、あなたのプロジェクトに共感するファンはここにいますよ、だからそこに行ったらどうですかなんていう事をしたりとか。これからのクリエイターのひとたちって本当に幅広い分野に存在するわけだから。

—そうか、向かう方向としてエージェントっていうのは新しいですね。フリーメディアが向かうのって普通コンサルに行くじゃないですか。落としどころはそこしかないのかなって思っていたけど、エージェント化っていうのはいいですね。

(最後に)
昨年co-labのメンバーとして再び帰ってきたgreenzのメンバー達ですが、これからの自分たちにとっても、大きな存在であることは間違いないでしょう。彼らが紹介する「マイプロジェクト」も毎月イベントを起こしてファンを作っていかなくてはいけなかったり、ワークショップの場を求める人が年々増えているなど、co-labのスペース利用についての要望もありました。今後は身近で頼もしいファシリテーターとして、兼松さんをはじめgreenzに上手く僕らの場を活かしてもらえればと願いつつ、そんな僕らのこれからのコラボレーションにもご期待下さい。