INTERVIEW
自動運転バスの未来、「人を感じる」技術とは?
co-lab渋谷キャストに併設してありますco-factoryを運営する株式会社SpiralMind(以下SpiralMind)が、2018年5月8日(火)から5月10日(木)に福岡空港内で行われた自動運転バスのデモンストレーションへ「アバターテレポーテーション技術」を提供いたしました。
公式プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000026233.html
「SBドライブ、「ITSフォーラム 2018」に関連し福岡空港で国内線と国際線をつなぐ自動運転バスをデモ」
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1119377.html
※デモンストレーション概要
福岡空港内で走行する自動運転バス内に設置した遠隔ディスプレイ上に表示されたアバター(CGキャラクター)に、co-lab渋谷キャスト内のHoloDive内にいるオペレーター(声優)の表情と音声をリアルタイムに反映し、あたかもアバターがバスガイドかのように振る舞ってくれるというデモンストレーションです。この「アバターテレポーテーション技術」をSpiralMindが提供しました。
今回は、SpiralMindの鎌田氏、秋山氏、山田氏の3名にお話をお聞きしました。左から、山田氏、鎌田氏、秋山氏。
ーかなりの数のメディアに自動運転バスのデモンストレーションが取り上げられていて、今回、SpiralMindが提供した「アバターテレポーテーション技術」の注目度の高さがうかがえます。今回の技術の特徴を具体的にご説明いただけますでしょうか。
鎌田氏:今回の「アバターテレポーテーション技術」は、1つ1つの技術は真新しい訳ではありませんが、既存の技術を組み合わせ、「人間感」や「生身感」、「ライブ感」が出る事を重要視しました。具体的には、今回は遠隔のバスガイドが実際にしゃべるシナリオを、いかに福岡でバスに乗車している人が「人に見守られている」という感じを出せるかという事です。注意事項などのベースは台本にはありましたが、それ以外はほとんどアドリブです。バスガイドの声を担当する声優さん自身の人間力も要素の1つです。
※実際にHoloDive内で声優さんが喋っている様子。
秋山氏:声優さんも次第に慣れてきて、バスに乗車している実際のお客様の反応を見ながら、アドリブを入れるようになり、それも良かったですね。実際、バス車内のスタッフと声優さんのアドリブの掛け合いも結構あったんです。
鎌田氏:所謂、エキスポなどで行われる商品紹介などのナレーションは決まりきっていますよね。そういった決まりきったナレーションでは、今回の我々が目指しているライブ感、訴求しようとしている「人を感じる」という部分が伝わらないので、声優さんが喋るシナリオの制作担当者には、そのあたりを意識してもらい制作頂きました。ナレーションのようににきっちりやってしまうと、「それはAIでいいんじゃないか」「ビデオ(収録した映像を一方的に流す)でいいじゃないか」となってしまうんです。
今回の自動運転バスに乗車する方も、従来のように収録した音源を映像にのせているだけと誤解する人が多かったんですが、「そうじゃないんです、今、実際に東京にいる声優さんが生でしゃべっているんです」というと、一斉に驚いていました。
山田氏:結果的に、今回の「アバターテレポーテーション技術」は、リアルタイムで車内を見守っていないと出来ないという事を再認識し、リアルタイムで反映し、「人を感じさせる」ことの重要さがわかりました。
鎌田氏:今回はアバターに遠隔で声優さんの声をのせましたが、従来、バスガイドさんが普通に行っていた事なんです。しかし、地方では、バスガイドや運転手も、そもそも働き手がいなくなってしまいつつあります。一方で、バス自体も、公共交通機関としてなくてはならないという事があるんです。
今回の技術により、単純に人手不足の解消になりますが、過疎地域、人があんまり来ない所に別の収益目的、聖地巡礼など無名の土地に新しいコンテンツを持ってくる事により、プラスの利益を地元に還元でき、人手不足の解消+観光資源の両立が出来るのではないかと考えています。
この新たなコンテンツを地方に導入するという切り口は、バス以外もいろいろあると思っています。結果的に、我々SpiralMindが掲げている「社会解決」に寄与出来ると考えています。
ー今回の技術があれば、バス以外にも様々な展開が見込めせそうですよね。その他、具体的に今回の技術を活かせそうだと考えている分野などございますか。
鎌田氏:ホテルのフロント業務など転用できそうですね。「変なホテル」が話題にもなりましたが、話題作り以外にも、人を常駐させない点でコスト削減に繋がります。これもホテルには限らないですが、アバターテレポーテーションと同様に、無人化が進んでいく中、全く人がいなくて良いのか、困った時に相手がいないくて本当に良いのかという点は気になります。
ー全てAIロボットに取って代わってしまう事を想像しただけで、不気味です(笑)。あえて人間味を出す事によって軽減できる、人の気持ちの部分が重要なのは感覚的にわかる気がします。しかし、その人間味を出すことによって、ハードウェア含め、コストも相応にかかってくるように思えますがその点はいかがでしょうか。
鎌田氏:今回の自動運転バスを使用した実験ですが、こういった内容の中では、実はかなりコストはかかっていないんですよ。
山田氏:そんなに大げさな機械が無くても出来るという事によって、今後普及できると見越しているんです。
鎌田氏:最近、ヴァーチャルユーチューバーが出てきていますが、制作するのにテレビ番組を作るような規模になってしまっていて、なかなかそれだと普及しないんです。
そうではなく、人手やリソースに困った過疎地などで本気で継続的に使ってもらおうとなると、保守等含めると初期投資を抑えなければならない。
今回用意したハードウェアは、基本的にiphone1台と替えのiPhone1台、バスの中はPCとモニター、マイク、スピーカーなど。その他は、電源とネット環境(しかもモバイルWi-Fi!)だけなんです。通信量も少なく、問題なく運用する事が出来ました。
ーハードウェアはそんなにシンプルな構成で実現したんですね!実際に現場で困った事とかはございましたか。
鎌田氏:バス本体や実験場所である空港から様々なノイズが出ていて、それは困りましたね。ポンチョというハチ公バスなどに使用されているバスで、ごくごく一般的な車両を使用したのですが、特別に電波対策などしているバスではない為、電磁波が出てしまい、ノイズが入ってしまったんです。結果的にケーブルをシールドしたら直りましたが、こういった部分は、現場でやってみないとわからないんですよね。その他、バス車内のマイクの置き場所を変えるとか地味な作業で何とか障害をクリア出来ました(笑)
山田氏:そういった一般的なバスを使用する事で、わざわざバスを改造しなくても、こういった技術を使用する事が出来るという事もわかったんです。
鎌田氏:日本では何社かバスの自動運転を行っているが、今回のように既存のバスを簡単にカスタマイズできる事に意味があるんです。
ー今回の自動運転バスの事業は事業化する予定はございますか。
鎌田氏:今回は事業化をメインにしてはいませんでしたが、各所から好評だった為、もうちょっと事業化する事を念頭に置いて、内容を詰めていってもいいかと感じています。
秋山氏:今回の技術は、観光バスや観光列車事業を行っている会社や行政の人から問い合わせが多かったです。
ーco-lab渋谷キャスト1F入口横にあるHoloDiveで開催した事で、co-labメンバーも気になっている人が多かったようです。
山田氏:co-lab渋谷キャストの入口で今回は公開収録的な感じで開催する事が出来た事で、クリエイターや隣のオーレのお客様など様々な方々の目に触れる事が出来ました。結果的にそういった思いもよらぬ、広告効果もありました。
ー今後、アバターテレポーテーション技術のみならず、co-labクリエイターとのコラボレーションも期待できそうですね。本日はお忙しい中、どうも有難うございました。
ご紹介したアバターテレポーテーション技術は体験する事は出来ませんが、
今回、アバターテレポーテーションの収録を行ったco-lab渋谷キャスト併設のMR専門工房「co-factory ×HoloDive」は、11:00-17:00(昼休みを除く)の間であればいつでも開設しています(営業時間は平日10:00-18:00)
ご興味がある方、または、VR・MRを未体験の方は、ぜひ体験していただければと思います。
なお、HoloDiveご利用の際は予約が必要です。ご体験およびご相談のご希望は、3日前までに下記の予約フォームよりお申込みください。
「HoloDive ご予約ページ https://reserva.be/spiralmind」
[インタビュー・執筆・写真:向後]