渋谷の新クリエイティブシェアオフィス「co-factory」オープニングパーティ開催


次にご登壇いただいたのは、Enhance Incorporated代表の水口哲也氏。Enhance Inc.は、VR・AR・MRを始め、XR(拡張現実)の技術を駆使して音楽・ヴィジュアル・触覚を組み合わせた新しい体験や、新しいプロダクトを生み出す制作会社です。今回は「シナスタジア X1」についてのお話を伺いました。

「シナスタジア X1」は、触覚を使った新しい音楽の聴き方を体験できる装置。チェア型の装置に体を預けると、細かいニュアンスまで再現された人の声や、ドラムを叩いたときの感覚を全身で感じることができます。まさに最先端の音楽体験ですね。Enhance Inc.では現在「シナスタジア X1」を使った映画鑑賞など、この装置が生み出す新たな体験の可能性を探っているのだそうです。「ハイレベルなテクノロジーが当たり前になった世の中に、どんな『体験』を提供できるかを実験し続ける」と、水口氏は語りました。

次にご登壇いただいたのは、MAKERS FUND/makerspaceのZen Chao氏。makerspaceは日本のフリーランスゲームクリエイターが世界進出するためのプラットフォームをつくる会社です。Chao氏からは、日本のゲーム業界の現状について伺いました。近年は、個人や少人数の会社が作ったインディーゲームが大ヒットするケースが多いそうです。しかし、そのヒットゲームの製作者のほとんどが海外クリエイター。日本のクリエイターは、大きな組織に所属して活動するのが当たり前と考える人が多く、組織から独立して世界進出する人が少ないのが課題であると、Chao氏は言います。そしてその現状を変えようと設立したのが、makerspaceです。

co-factory内にできた「asobu」は、makerspaceが手がけるゲームクリエイターに特化したシェアワークスペース。会社から独立してゲーム作る人たちが所属する、コミュニティハブのような場所になること、また「asobu」に日本でゲームを作りたい海外クリエイターを招き、日本メンバーと交流させることで、世界で活躍する日本ゲームクリエイターを創出することを目指しています。

次にご登壇いただいたのは、株式会社マバタキの木村彩人氏です。Webデザイン会社であるマバタキは、実際のホームページ制作を中心に、コーティング、サイトの動線、マスタープラン、ロゴやメインビジュアルまで、さまざまな制作業務を担当しています。「マバタキはどんな会社か?」という問いに対して、木村氏が「Webに関することを“町工場”のように実際に手を動かしモノづくりする会社だ」と例えていたのが印象的でした。

Photo:Akira NAKAMURA

またマバタキの新オフィスは、大学で建築専攻だった木村氏が自ら作った模型をもとに友人に設計を依頼。洗練されたデザインのオフィスにみなさん興味津々でした。

最後にご登壇いただいたのは、株式会社MUZIKAの戸取瑞樹氏。MUZIKAはアートディレクションやデザインを主軸としたクリエイティブカンパニーです。ロックバンド「Radiohead」のPVや、スニーカー「PUMP FURY」の攻殻機動隊モデルやゴジラモデルのプロダクトデザインなど、多岐に渡るプロジェクトに携わるMUZIKA。その中でも、6年前からMUZIKAがアートディレクションなどを手がける『超福祉展』の発足についてのお話の中で、渋谷の地域貢献のヒントになりそうなエピソードを伺いました。

Photo:©NPO法人ピープルデザイン研究所

「『超福祉展』の代表・ピープルデザイン研究所の須藤さんという方の息子さんには重度の障害がありました。彼が履ける靴にはかっこいいものがないということで、アパレル関係に精通していた須藤さんがOnitsuka Tigerに問い合わせて一緒に靴を開発したんです。そのデザインがかっこよかったので一般の渋谷の靴屋で販売すると、障害者施設から多数の問い合わせが。しかしそこで須藤さんは郵送せず、『渋谷の街中に出て買いに行ってください』と返答しました。須藤さんは渋谷の街中に出て、障害者の方を経済圏に乗らせて活動してもらいたかったんです。」

多種多様なメンバーが揃った「co-factory」。今回のオープニングパーティを経て、入居者同士の交流をさらに深めることができました。これから「co-factory」がシェアオフィスとしてだけでなく、地域貢献のプロジェクトとしてもどのように発展していくのか、期待が高まります。

(株式会社東京ピストル 山田 蓮)