Report|田中美帆が「ソーシャルデザイン論」の授業をやってみた!第3回〜デザインとビジネスのブリッジ構造 編〜

今年1月に第2回目を開催した「『ソーシャルデザイン論』の授業をやってみた!」シリーズの、第3回目(最終回)が3月30日に行われました。
これは、co-lab二子玉川メンバー、株式会社cocoroéの田中美帆さんが多摩美術大学での「ソーシャルデザイン論」の授業を受け持った中での様々な気づきについて語るシリーズイベントです。
第1回イベントレポート)(第2回イベントレポート

最終回となる今回は「〜デザインとビジネスのブリッジ構造 編〜」というサブタイトルのもと、ゲストスピーカー3名をお招きしソーシャルデザインが成り立つ理由(わけ)を徹底研究しました!

最終回ということもあっていつも以上に賑わいを見せた会場でイベント開始!
はじめにイベントの主催者であるcocoroé田中さんからイベント最終回のオープニングトークと、ソーシャルデザインが成り立つ3要素「みんなのためのデザイン/みんなでつくるデザイン/つづいて行くデザイン」についての簡単なご説明をいただきました。


オープニングトークをする株式会社cocoroé 田中美帆さん

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そしていよいよゲストの登場!
ゲストスピーカーの1人目は、株式会社フェリシモの児島永作さんにご登壇いただきました。
児島さんはフェリシモ入社後、生活雑貨の商品企画や事業開発に取り組まれてきたそうです。

そして2011年の東日本大震災以降は「花咲かお母さんプロジェクト」として、東北各地での商品開発やプロジェクトに取り組まれているという児島さん。実例を交えた東北支援プロジェクトのご紹介には、ビジネスモデルの成功例として会場内での注目度も高く、来場者の方々が真剣に聞き入る姿が見られました。

最近は東北を舞台とした様々な企画の立ち上げだけでなく、企画・開発のノウハウを実際に東北を拠点としている事業者の方々に対して教授していくという新事業「Startline」がはじまったそうです。
ご自身も仙台に住居を移し、東北からスター商品を発信するためのプラットフォーム作りや、東北在住の事業者による運営のアドバイザーとして、お仕事がスタートしたばかりということでした。
児島さんのお話を聞いていると、都市部からのトップダウンだけではなくローカルの事業者の方々が相互につながり商品が生まれていくことが、これからのスタンダードになっていくという未来図の様なものを想像できるようでした。

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2人目のゲストスピーカーは、co-lab二子玉川のメンバーでもある株式会社グラディエの磯村歩さんが登場。まずはじめにご自身がソーシャルデザインに向き合うきっかけになった、ユーザビリティという分野での実体験のご紹介をしてくださいました。

現在、「futacolab(フタコラボ)」というソーシャルギフト事業を東京都世田谷区の福祉作業所を中心としたメンバーで事業展開している磯村さん。非常に印象的だったのは、ビジネスについて考えた時に、磯村さんが常にwin-winの関係をキーワードにしているということでした。

それは、健常者とハンディキャップを持った方々によるコラボレーションがクリエイティブなプロダクトや新しい考え方を生み出すといったご自身の経験からきているそうです。そのwin-winの関係を、世田谷区という地域の福祉作業所が生産し地域のパティシエやデザイナーが関わっていくというビジネスにもあてはめていったことで、futacolabというブランドの魅力が確立されていったそうです。こうした社会性・地域性に加え、カスタマイズ性のあるお洒落な商品デザインがあるのもfutacolabならでは!相乗効果によって生み出されたブランド力は他社との競争性も持っており、サスティナブルなソーシャルビジネスの実例をご紹介いただきました。

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休憩をはさみイベントも後半のここからは少し趣向を変え、ソーシャルデザインをテーマにcocoroé田中さんと、昨年秋にco-lab二子玉川に入居されたbiotope株式会社の佐宗邦威さんによるトークセッションが行われました。

「いまなぜ、ソーシャルデザインに注目が集まっているのか?」という疑問をテーマに、佐宗さんからは「デザイン思考=誰でもクリエイティブになれるという現代の流れがあるのかもしれない」というお話がありました。現代を生きる我々が、働く意義を考えた時に単にお金に結びつくだけでなく個人のモチベーションにつながるような新たな価値をビジネスへ見出す人が増えているという佐宗さんからのお話に、今回のイベントに来場者された方々も深く共感されているようでした。

盛り上がりを見せたこのトークセッションには、フェリシモ児島さんとグラディエ磯村さんのゲストスピーカー2名も途中で飛び入り参加!
4名それぞれがソーシャルデザインという取り組み方に至ったきっかけについて語ると共に、ビジネスとして利益をあげながらソーシャルデザインを実践するという両立こそが、本当の意味で現代に必要なデザイン力かもしれないというトークが熱く繰り広げられました。

毎回大きな盛り上がりを見せ、今回で最終回を迎えたソーシャルイベント論のシリーズイベント総まとめとして、最後に主催のcocoroé田中さんから「ソーシャルデザインというキーワードが今まさに世の中の注目をあびている」という実感のお話がありました。それと同時に、現代を生きる私たちが様々なかたちでソーシャルデザインを実践していった今後、はじめてソーシャルデザインとは何かの定義されることなのかもしれないという期待も残しながら、イベントは終了。

実際にビジネスの場でソーシャルデザインを実践している方々からリアルな実例を聞くことで、デザインにおけるフィールドの多様性やこれからの社会で求められるデザインの現在(いま)を探るとても貴重なイベントとなりました。

ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。

[コミュニティ・ファシリテーター:鳥井]

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