REPORT
アバターテレポーテーションによる未来の働き方と中国の最新動向
2018/11/14(水)、co-lab渋谷キャスト1Fラウンジにて、co-factoryを運営する株式会社SpiralMind出演、株式会社内田洋行の動画メディアの社会見学バラエティ「UCHIDA-TV」が公開生放送されました。
今回は、生放送中に通行するco-lab会員の方がオープンスタジオのような形で、自由にご覧いただけるように致しました。
番組MCは、Aive(アイヴィ)さんと山本栞里さん、出演者は、SpiralMind代表取締役 鎌田 卓氏、SpiralMindイノベーションラボ・パートナーiAX代表Feng Liping氏。「アバターテレポーテーションによる未来の働き方と中国の最新動向」というテーマでトークが進みました。
はじめに、MCさん方によるアイスブレイク。
MC:「現在、働き方改革などが言われていて企業でも取り込む動きがありますが、今日はもっと未来の働き方についてトークいただきます。SpiralMindにco-lab渋谷キャストにて出演いただくのは2回目となります。」
MC:「SpiralMind社が目指す「未来の働き方」を、SpiralMind代表取締役 鎌田 卓氏に語っていただきます。」
鎌田氏:「SpiralMindは、”人間らしさを生かしたデジタル社会の創造”を重要視し、大きく3つの社会に対するMindを掲げています。1つ目は、持続的に経済成長が可能な社会。2つ目に、人間らしさを生かしたデジタル社会。3つ目に、地域的・身体的格差のない社会です。弊社は、AR,VR,MR,AIなどの技術を取り入れますが、単にそれだけでなく”人間らしさ”を大切に持ち続けるという考えに成り立っています。
本日は、この3つ目の地域的・身体的格差のない社会を創造するための手段として、アバターテレポーテーションについてお話します。」
MC:「距離的格差や地域格差、見かけや障害、性別等の特定のカテゴリーにはめられてしまい、本来の能力を十分に発揮できる場がない人がいますよね。そのような枠を取り払うための取り組みなのですね。」
鎌田氏:「SpiralMindは、そういう社会に向けた取り組みに、共感いただいたパートナーで構成されています。ここで共創したものを提供して、そのフィードバックをまた新しい研究に役立てていくようなビジネス形態をとっています。」
鎌田氏:「それでは、本日の本題である”アバターテレポーテーションによる未来の働き方”についてお話して行きましょう。 SpiralMindは、5月、福岡の空港で自動運転バスの実証実験に参画し、アバターテレポーテーション技術を提供しました。アバターを実際に操作するオペレーターはここ渋谷キャストから遠隔で、福岡の自動運転バス車内でのモニターに登場し、乗客の安全を見守り、アナウンスします。オペレーターの顔の表情を細かく読み取り、アバターに投影させる技術で、リアルタイムで誤差もほとんどなくテレポート出来るので、一方的に流れる映像とは格段に違います。モニター上に注意事項等の掲示も同時にしながらアナウンスが出来るので、視覚的にも乗客への安心感へと繋がります。さらに双方向で会話もでき、転倒などのもしもの時にも検知して対応することができるのです。
10月には、日立市での自動運転バスの実証実験にも参画しました。自動運転バス実証実験を行った SBドライブ株式会社 と協業して、弊社のアバターテレポーテーション技術を提供することで、SpiralMindらしい、AIには出来ない人間らしさを生かしたリアル感を示すことができたと考えています。」
MC:「自動運転と言えば、身近なところでは、ゆりかもめですよね。考えたら、無人だという怖さを感じますよね。」
鎌田氏:「このアバターテレポーテーション技術によって、無人でもいざというときにケアができて安心していただけるし、さらには自動運転バスのアナウンスのみならず、この技術を応用して別のサービスに発展していけると考えています。先ほど冒頭でお話しした、3つ目のMind Network 、地域的・身体的格差のない社会ですが、このアバターテレポーテーション技術を使うことによって、さまざまな環境の違いや格差を超えて、自宅に居ながらにしてスマホひとつで仕事ができる、そんな働き方改革ができるのです。」
鎌田氏:「SpiralMindイノベーションラボのパートナーのおひとりであります、iAX代表 Feng Liping 氏をゲストにお迎えして、今回、中国の最新動向についてお話をお聞きしたいと思います。」
Feng氏:「以前は中国と日本を毎週のように行き来していましたが、さきほどお話のアバターを実際に使って、今ではほとんど日本で仕事ができるようになりました。」
MC:「Fengさんは、深セン市民ですよね。とても大都会ですね。」
Feng氏:「以前は、二万人ぐらいの漁村でしたが数十年かけ、現在は大都市へと変貌を遂げました。」
鎌田氏:「どうしてFengさんがSpiralMindのパートナーとなったのか、お話をお聞きしたいと思います。」
Feng氏:「以前は、中国で検察の組織の中で検事をしていました。その時に、厳しい組織の中で個人的な将来の不安がありました。中国国内にいては、親の反対にあうので海外に出ることにしました。その時に選んだのが知り合いのいる日本でした。1994年に日本に来てから、大学に入り直し、日本語を勉強しながらITを学び、その後就職。その時の顧客だったのが、鎌田さんだったのです。それから一緒にお仕事するようになりました。それから香港返還時に、香港の特徴である、頭脳、サービス、海外との融合が進んでいることをいかし、IT、通信、半導体のデザイン、設計、開発を中心に発展しようという香港政府へ、日本代表として日本のハイテク企業を香港に誘致する仕事を8年間ほどしました。その後、日本のIT、通信、半導体の企業の海外進出のコンサルタントも行うようになりました。おもに日本企業の中国への進出のサポートですが、日本企業の特徴を分かった上で、どうしたら中国でうまくできるかというコンサルタントを中心にやっていました。
今はさらに、アバター、AIロボット、インターネットの3つのカテゴリーの中から離れずに仕事をすると決めています。なぜかというと、5歳の息子と一緒にいたいという思いからです。まだ子どもがいない時は、毎週のように出張していて、ひと月のうち、東京の自宅には3泊ほどしかいられなかったからです。 今は、自分の時間を大切な息子と一緒にいたい、長くいたいという思いから、このアバター、AIロボット、インターネットを上手に使って仕事をしています。アバターを使えば打ち合せでも、子どもの世話をしながら、どんな格好でもできるのですよ。お化粧しなくても、パジャマでも(笑)」
鎌田氏:「SpiralMindのパートナー会議でもアバターを使っています。」
Feng氏:「姿は見えませんのでどんな格好でも、自宅に居ながら、家事をしながらでも出来ますから、とても助かっています。仕事で出かけなくてはいけなかったら、預けた子どものことが心配で、母親として申し訳ないという気持ちになります。」
MC:「今のお母さんの一番の悩みですよね。全国のお母さんの理想的な働き方ですね。」
Feng氏:「ただ、実際に現場にいないといけないとか、カメラ越しでは対応できない仕事もあるので、将来、ロボットを使ってその場にいるというような働き方もありじゃないかと思います。ロボットには人格が無いように感じることも、アバターのように自分の声を通して動かせば、人間の性格を持つように感じますよね。そうすれば機械に対する尊敬というか、暴言を吐いたり、乱暴に扱うこともなくなり、自然とロボットに対して、人に接するのと同じようになると思っています。アバターとロボットはビジネスにとってとても相性がいいと感じます。」
Feng氏:「基本的に毎月、今でも深センに行っています。東京都と比較すると、人口1600万人のうち平均年齢およそ34歳と言われていて非常に若く、1980年代以降に生まれた人達が中心の都市です。ハードウェアのシリコンバレーと言われていて、華強北(フアチャンベイ)という電気街のような場所に世界の電子関連部品が集まってきます。世界中で新しく開発した商品をまずここで売れるかどうか、価格設定はどうするかなど試し、もし売れる見込みがあるなら、その商品を売り出すためのソリューションを提供してくれる会社が周りにたくさんあり、新商品として提案してくれるというサプライチェーンが出来上がっています。そのような環境で、エンジニア、起業家は深センに自然と集まってくるんです。」
MC:「ビジネスを始めるにはものすごく近道をしているように感じますね。」
鎌田氏:「よく会議の中でも話題になりますが、日本はそこら辺がとにかく面倒くさいというか、しがらみが多いので中々進まない。その点、中国は勢いがあるなと感じます。」
MC:「意思決定時間が遅い、理由もなくちょっと置いておこうかと言われますよね。」
Feng氏:「以前なら日本の製造業のほうが強かったですが、今は中国と言われています。中国も最近では人件費が高くなったことで他のアジア諸国へ流れる動きもありますが、部品、ソフト、ハードのサプライチェーンの仕組みや、何といっても人口14億人の市場があるというのは強みで、実際に効率が良いので集中しているのです。深センが今 力を入れている分野の、AI、IoT、AIロボット、ドローン、Makersにサポートが入っています。例えば、日本の大手の会社でもアイデアや提案をしてもすぐに認めてもらえないことが多いですが、深センならすぐに認めてくれるイメージが強いので、逆に深センで起業する日本の方々が増えてきているという面白いことが起きています。私たちの時代では、中国は堅苦しいから海外へ行きたいと言っていたのですが。」
鎌田氏:「今やエンタメの世界でも中国に注目が集まっていますよね。中国でどれだけ受けいれられるかは、世界進出のための重要なバロメーターにもなっています。」
Feng氏:「特にハードウェアのコストは基本的に価格が決まっています。数が多ければ多いほどコストもトータルで安くなりますから、最初に市場の規模も大きい中国で受ければ、コストダウンすることが出来ます。それで日本とシェアしていけば、最初からコストが安い状態で売れます。そうやって最初に中国の市場に出してから世界に出した方がトータルでコストが安いということです。 私の日本の会社のロボットも深センからです。AI、無人化、キャッシュレス、全て深センからスタートして全国に普及しました。中国では1ヶ月いても現金は使いません。全てスマートフォンひとつで済みます。日本に帰ってくるとお財布を探します。(笑)」
Feng氏:「今でもスカイプを使った会議もありますが、近い将来、外に出なくても、着替えなくてもいい、身体的にハンデがあっても問題なく参加できる、アバター上での会議システムを開発中です。」
鎌田氏:「試験的な運用もはじまっていますからね。映画の世界と思われるようなことは既に開発されてきているのです。」
Feng氏:「世の中のママたちや、すべての家族に愛が最重要だと思っていますので、この会議システムもその一つですが、皆が家族と一緒に過ごせる時間を増やすために出来る限り、ロボットやインターネットを使ってビジネスをしましょうと提案しています。」
Feng氏:「中国で今すごく流行っているのは、キャッシュレスで支払い、ロボットが料理を出してくれる無人のレストランで、食後もボタン一つでテーブルの底が開き流れて回収してくれるシステムです。このシステムだと人件費を節約できますが、全面ステンレスで、全て機械化され無機質な感じなのです。これではごみ箱の上で食事をとっている感じがする…。私たちの目指す世界とは方向が違うものです。ロボットでも愛情溢れるものを作りたい。そう考えています。例えば、店内もぬくもりがあって、アバターでなどでお客様をサポートし会話もできて、無人でも人を感じられるものにしたいと考えます。気持ちの問題なのですが、そうしたことがこれからの社会にとってとても重要なことだと思っています。」
鎌田氏:「中国はものすごいスピードでシステム化が進んでいますが、Feng さんがおっしゃるように、人間性はとても重要な要素だと考えています。どんな技術にもそれを使う人の気持ちを第一にしなければならず、SpiralMindは、まさに”人間らしさ”を大切に持ち続けるという考え方の上で、精神的にも豊かなしくみづくりを心掛けています。」
鎌田氏:「また、中国のアグレッシブさを日本はもっと見習うべきだと思います。ただし、時にはそれが先ほどのように間違った方向に進むというリスクはありますが。」
Feng氏:「同時進行というのが中国のスピード感ですね。可能性が少しでもあるならすぐ試せる。試して駄目なら修正する、深センには、サポートする人、モノ、市場そこに全てありますから、スピード感があります。日本では、計画、計画、計画。その計画も一年経つとその時には既に市場が変わってしまっている。 今のハードウェアの世界では、インターネット上の情報は3か月で古くなります。その計画と準備に半年もかけられません。ですから日本は圧倒的にスピード感が足りません。」
鎌田氏:「とにかくアグレッシブに動く。気をつけなければいけないのは、間違ったと思った時にすぐそこで修正をする。日本だと最初たてた計画が優先されすぎて、間違えているとわかっていて言えないから、そのまま続けてしまう。 でも間違いを恐れて最初から何もしないというのはナンセンスなんじゃないかと思います。やって間違えたら直せばいいじゃないかと。間違いを恐れて何もしないことよりも、そのほうがはるかに得が多いと思います。」
MC:「ある本に、“試してみるは失敗しない”という面白い言葉があります。チャレンジは失敗じゃないのだということ。」
鎌田氏:「チャレンジして試してみて、それがまずかったと思ったときに修正しないことが大失敗なのです。
最後の鎌田氏の一言に、皆さん、そうですとばかりに笑って締めくくられました。
このライブイベントを通して筆者は、遠隔でアバターを使った新しい働き方や、リスクを恐れ考えすぎずに行動してみる中国のスピード感に共感したのでした。
さて、次回のイベントレポートは、VRスプレーイベントでも活躍いただいている漫画家でco-lab渋谷キャストメンバー「ゆきち先生」の書籍出版記念パーティー
「ピンクの忍者ポン吉」クラウドファンディングで、ついに書籍化!
みんなで祝おう出版記念模様の予定です!お楽しみに!
[株式会社SpiralMind:山田里奈・井川由子]