REPORT
プレゼン会|デザイン x 多摩川 x ネクストジェネレーション!新たなコミュニティづくりの可能性
2019年の年明けしてからというもの、二子玉川の多摩川河川敷で活動を続けるTamagawa Brew関連のイベント目白押しだったco-lab二子玉川!!
(Tamagawa Brewの活動レポートはFacebookページからもご覧ください!)
ですが、co-labメンバーの交流イベントも、もちろん引き続き開催しています!!
今回は、今年の春に開催されたco-lab二子玉川プレゼン会のレポートです。
(今回のフードテーマは持ち寄りおかずでサンドウィッチパーティー!)
いつも通り、co-lab二子玉川メンバーみなさんのご家族も交えたファミリーパーティー仕様となったプレゼン会は、春のウキウキした陽気に誘われてリラックスしたムードのなかスタートしました!!
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トップバッターはナカナカグラフィックの中川寛博(ナカガワノブヒロ)さん。
これまで多くの作品を手がけてきた中川さんは、都内のデザイン事務所を経て2016年に独立。現在はデザイン事務所ナカナカグラフィックのアートディレクター/グラフィックデザイナーとして活動されており、その作品歴は書籍から広告物、プロダクトのパッケージデザインまで多岐にわたります。
(ナカナカグラフィック公式サイトより ※作品詳細はサイトからご覧ください)
中川さんは「トータルのデザインディレクションも細やかに行いたい」という考え方から、撮影現場への立会いにも参加することが多いそうで、協業するイラストレーターさんなどがいればイラストのタッチを最大限に活かしたデザインに落とし込むなど、クライアントのニーズにデザイナーらしい発想や遊び心を柔軟に用いて具現化されています。
たとえば、ナカナカグラフィックのネームカードはとても特徴的なカタチをしており、中川さん自身もこのような”カタチを感じるデザイン”を得意としていると言います。ではそのデザイン発想にはどういったメッセージが含まれているのか?会場からの問いかけに答える形で中川さんが語ってくれたのは「デザインはコミュニケーションの入り口」というキーワードでした。
(中川さんが得意とするカタチのあるデザイン/ナカナカグラフィック・ネームカードより)
「デザインを通して、手に取った相手の心をほんの少しだけ動かすことができれば、そこから始まるコミュニケーションがきっとスムーズで豊かなものになる、それができればデザイナーとして嬉しい」という中川さんの言葉はとても印象的で、会場に集まった参加者(その多くはデザイン領域のクリエイター)からも共感の声があがっていました。
あたかも静的だと捉えられがちなデザインが生み出すものが、時にとても動的で、人の感情をともなうコミュニケーションにつながるという新鮮なイメージの共有から始まった中川さんのプレゼンにより、この夜のプレゼン会への期待度が一気に高まったようにも感じました。
また、プレゼン会でご紹介いただいた中川さんの作品群でも、特に会場から大きな反応が起きたデザインは、なんとご自宅の一軒家のデザイン。
二子玉川近郊、少しのどかな風景が広がり出す地域に一軒家を建てた際、『真っ白な家』『トンガリ屋根の家』など、特別なこだわりがあったと言います。
一緒に建築設計から携わってくれた建築家には、”建築家泣かせ”と苦笑されてしまったというデザインですが、なかでも特に中川さんが力をいれたのは、家屋外観に施されたツタ植物だったとか。プレゼン会では築年数も進みデザインに変化が現れてきているという写真も紹介してくださいました。
(BEFORE:見慣れた日本家屋に並び、白くてとんがり頭の家がひょっこり)
(AFTER:2019年現在のご自宅の様子、ツタ植物が屋根近くまで成長)
こうした自宅建築において、「自分の家を通して、時間経過をデザインすることに挑戦したかった」と中川さんは語ります。仕事におけるキャリアを着実に積み重ねながら、ご自身の日常の中で時間軸というデザインの可能性に取り組んだり、どこか遊び心のある現在進行形の挑戦を続ける中川さんですが、この『トンガリ屋根の家』こそが、中川さんのデザイナーとしての姿勢が集約されたような作品なのかもしれません。
プレゼン参加者との質疑応答では、デザイナーからの共感の声や建築家からの自宅建築に対するコメントがあり、トップバッターから大いに盛り上がる一幕となりました。
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2番目は、チケタンド株式会社の小野雄紀(オノユウキ)さんにご登壇いただきました。
なんと小野さんは慶應義塾大学理工学部の現役大学生iOSエンジニア!そして、大学在学中に起業したチケタンド株式会社の代表取締役としても活動されています!!
co-lab二子玉川においても過去最年少メンバーの登場、しかも自身の会社を起業しているというセンセーショナルなプレゼンに、冒頭から新鮮な驚きの声が会場からあがっていました。
そんな小野さんがiOSエンジニアの道に進んだきっかけについて、参加者の興味も釘付けでしたが、幼少期から”ものづくり”が大好きだったことが大きく影響していると小野さんは言います。
たとえば小学生時代には、家族が読む新聞に興味を持ち、手作りの『おのしんぶん(小野新聞)』をスタート。A4用紙に親族へのインタビュー取材記事を掲載して本物さながらの新聞づくりで遊ぶなど、とにかく自分の手と頭をつかって何かを作ることに夢中だったという原風景が語られました。
そんな幼少期を経て現在はiOSエンジニアになった小野さんですが、さすが、エンジニアとしてのスタートも非常に早かったそうです。きっかけは、中学受験合格のご褒美にご家族から贈られたiPod touchと、3年後の高校受験合格で送られたMac。アプリ開発の環境が整った小野さんは10代にして、すっかりプログラミングにのめり込んでいったそうです。
まずは本を読みながら独学での開発作業を始めたそうですが、普通科の高校では周りにプログラミングしている子もなかなか少なく、自分の開発レベルを他者と比較することもできなかったため、より世界を広げるために中高生向けの『アプリ甲子園』への出場を決意します。そして見事に決勝まで勝ち残り入賞するまでに至りました。
(2014年アプリ甲子園サイトより/高校生時代の小野さんが開発した『待ち合わせ』アプリ)
そして、独学で楽しんでいただけだったアプリ開発生活のなか、このアプリ甲子園出場を経て初めて自信を手にしたと小野さんは言います。自分の将来の方向性を見据えたのもこの時だったとか。
一方で、「地元で暮らしているだけでは、相変わらずプログラミング仲間はみつからなかった」という小野さん。そこで、同じ分野への興味を持つ仲間を集めた学生コミュニティをつくろうと、『TeenCoders(ティーンコーダーズ)』という学生団体を立ち上げました。小野さんたちの活動に注目したベンチャーキャピタルから協賛金をもらうなど、活動の規模を拡大しながら中高生を中心に運営をしていたそうです。(当時の所属メンバーが20代になったことをきっかけに、役目を終えた同団体は現在活動を終了しています。)
(TeenCoders(ティーンコーダーズ)メンバーとの記念写真、みんな希望に満ちている!)
その後、高校3年次で経験したLINE株式会社や大学1年次で参加した株式会社リクルートHDのサマーインターンシップなどを通して、ベンチャーキャピタルとの交流を増やしていった小野さんは、2017年大学2年の時に、いよいよチケタンド株式会社を起業するに至りました。
(プレゼン会の当日資料より/小野さんらしい整理された情報とインフォグラフィックス)
(小野さんの名作アプリ『『シンプル時間割2』』)
現在はチケタンドの代表取締役としての活動に力をいれるため、一時的に大学を休学中という小野さんですが、今後の活動ビジョンについて尋ねると「自社サービスの拡大はいったん制限し、業務委託案件を通して契約企業への技術提供をメインに活動したい。iOSエンジニアとしてさらに多様な力をつけていく数年間にするのが目標!」とのこと。
一方で、小野さんにとってライフワークでもある勉強系アプリ(『シンプル時間割2』など)の開発などは引き続き行なっており、今後も学生ユーザーに愛される実用的なアプリ開発は継続していきたいと語ってくださいました。
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3番目のプレゼンターは、株式会社グランデックスの野口剛(ノグチツヨシ)さんにご登壇いただきました。
野口さんのご職業はアウトドアツアーガイド兼プランナー!主にラフティングやキャニオニング、近年人気を集めているSUP(スタンド-アップ-パドル)などで、リバーガイドをするお仕事です。
埼玉県の長瀞で生まれた野口さんは高校卒業後に上京。以来、株式会社ベイクルーズなどのアパレル会社に長年勤務されていましたが、30歳になった年、ご自身の原風景である長瀞の大自然が忘れられず、ビジネススーツからウェットスーツに着替えリバーガイドのお仕事をスタート。
以後、グランデックスのゼネラルマネージャーとして埼玉県長瀞町、東京都奥多摩町などを舞台に様々なアウトドアツアーの企画運営などに携わっており、栃木県日光市では同社のゲストハウス立ち上げなどにも参加されたそうです。
(プレゼン会当日は、実際にラフティングで使用する折りたたみ式のボードを展示)
そんな野口さんは昨年co-labに入会されましたが、一体どうしてco-lab二子玉川にやってきたのか?会場からも興味の視線が注がれていました。そしてなんと、グランデックスの新プロジェクトの一つとして「二子玉川をパドルシティにしたい!」という大きな企みがあることを、野口さんが満を辞して語ってくださいました!
野口さんいわくパドルシティとは、ラフティングやSUPなどをはじめとしたパドルスポーツを通して、健康で活き活きとした生活を実現できる街のこと。
利便性の高い都市開発が進み大企業移転なども行われた結果、主にファミリー層にとって東京近郊の人気居住エリアとなってきている二子玉川には、発展する都市に寄り添う形で今なお多摩川が雄大に流れており、都市と自然の姿がひとつの風景に溶け込んでいる珍しい街とも言えます。
「そんな二子玉川でこそ日本の新しいリバーサイドライフが体現できるのでは?」と、グランデックスでも数年前から着目されたそうです。
当日のプレゼン会では、この日のために編集してくれた臨場感あふれる映像が上映され、グランデックスが大切にしているツアーコンセプトやアウトドアスポーツの魅力が映像を通して伝わり、会場に集まった参加者も野口さんのプレゼンテーションに一気に引き込まれていきました。
(チームでボートに乗り込み川を下るラフティングツアーの様子)
(大自然でワイルドに遊ぶキャニオニングというアウトドアスポーツ)
写真や動画を見ているだけで身体がワクワクするようなツアーばかりですが、グランデックスではこうしたエクストリーム系スポーツの上級者だけでなく、初心者の方でも楽しめるツアーであることも重要視していると野口さんは言います。では、それはなぜか?
野口さんは、リバーガイドとして、自然とともにあることはアクティビティを楽しむという側面だけでなく、その街で暮らす人々が水辺の環境へ興味をもち、川や自然を愛する人々のコミュニティ形成につながっていくことが大切だと考えているそう。また、自然環境を維持し、時には環境改善に取り組むということなども含め、総合的に自然と関わることがグランデックスや野口さん自身のリバーガイドとしてのお仕事の本質でもあるとお話しいただきました。
(二子玉川在住のco-labメンバーに囲まれて様々な質問に答える野口さん)
「1人でも多くの人にパドルスポーツを通した自然遊びの楽しさを知ってもらい、自分の暮らす二子玉川の街の自然をもっと好きになってほしい!」と語る野口さんのポジティブなプレゼンテーションに、二子玉川在住者の多いco-labメンバーたちの目も、いつもより輝いているような気がしました。
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そして、いよいよ最後のプレゼンターはムラハタワークスの古畑健太郎(フルハタケンタロウ)さんの登場です。
古畑さんは奥様とのデザインユニット『ムラハタワークス』として事務所を立ち上げ、主にグラフィックデザイン/プロダクトデザイン/ワークショップディレクションなどの分野で活動されています。
古畑さんはもともと文具メーカーのインハウスデザイナーを経験され、独立後の現在までにプロダクトデザインからエディトリアルまで様々な領域の製品や作品を手がけてきました。そして奥様はNPO法人CANVASや、かつて渋谷にあったこどもの城などで子ども向けのワークショップデザイナーを経験されており、こうしたお二人のバックグラウンドが一般的なデザイン事務所の領域を飛び越えたムラハタワークスの多彩な活動のプラットフォームとなっています。
(ムラハタワークス公式サイトより/古畑さん+村尾さん=ムラハタワークス)
そんな古畑さん、独立後も引き続きデザイナーとして手がける案件は幅広く、大手スポーツメーカーの案件を手がけることもあれば、信州のお土産デザインを担当するなどクライアントや活動地域も多岐に渡ります。
また、ワークショップデザインのお仕事では、コンテンポラリーダンス作品のデザインディレクションを担当されるなど、ムラハタワークスのデザイン事務所を飛び出した“作品作りの現場”でのライブ感ある活動もますます広がっているそうです。
(舞台作品『Come on de Dance!!(家紋でダンス!!)』の様子)
(子どもたちがオリジナル「家紋」をデザインしダンスをつくるワークショップ形式)
また、co-lab二子玉川/カタリストBAも共催している水辺イベント『Tamagawa Brew』のオフィシャルビジュアルなどを手がけてくださったのも、実はムラハタワークスさんです!
(Tamagawa Brewオフィシャルポスター/ムラハタワークスによるデザイン)
昨年のイベント初開催からco-lab二子玉川館内に大きく掲示されているポスターということもあり、プレゼン会場に集まったco-labメンバーからは「そうか!あのBrewのデザインをつくった人なんだ!!」と、古畑さんのデザインワークに改めて驚きの声が上がる一幕もありました。
(プレゼン会でもTamagawa Brewのポスターが紹介された)
そんな古畑さん、ご自身もご家族と一緒に二子玉川近郊に暮らしていますが、今回co-lab二子玉川への入会と2018年にスタートしたTamagawa Brewプロジェクトに参加したのには、実はそもそも大きな多摩川への愛があったとか。
その古畑さんの「多摩川・愛」がよくわかる作品が、ムラハタワークスがデザイン制作/販売をおこなっているオリジナルの『多摩川グッズ』です。こちらは売上の一部を多摩川のために還元していたりと、多摩川のファングッズでありながらサスティナビリティをもったソーシャルデザインプロダクトとなっています。
(オフィシャルサイトより/思わず集めたくなる多摩川グッズの数々)
また『多摩川でえがくワークショップ』では、多摩川沿いの間伐材や草花などの自然素材を使って描くワークショップを開催しており、大人から子どもまで多摩川沿いの地域住民に愛される野外イベントとして人気を集めています。
そして『多摩川を愛でる会』ウェブサイト運営では、多摩川のイベント情報や歴史・風土・自然など様々なコンテンツをお届けするという、(少しギークな)メディア発信活動にも力を入れているそうです。
(多摩川でえがくオフィシャルサイトより/当日のワークショップでできた作品)
古畑さんはこの日のプレゼン会のため、たくさんのスライド資料を作成してくださいましたが、ご自身のお仕事歴の発表よりも、多摩川への愛を説明するための資料をつくるのに注力してしまい、気がつけば多摩川を語るためのスライドが100枚を超えてしまっていたとか!この事実に、会場からも驚きと笑い声が起こっていました。
さらに、プレゼン会当日では、多摩川の自然の美しさや、川辺で育つ生物たちの暮らし(なんと、食べられる魚や料理レシピの紹介も!)など、ご自身の体験を交えて多摩川がみせる色々な表情を語ってくださいました。
(多摩川への愛を楽しそうに話す古畑さん/Mac Bookには多摩川ステッカーが)
実は地元民ではなく長野県出身だという古畑さんですが、なぜここまで多摩川を愛しているのか?会場からも疑問の声があがる一幕がありました。
きっかけは、多摩川がくれた東京生活での癒し。デザイナーとして多忙をきわめた20代で東京の暮らしに疲れ果てたある日、古畑さんは多摩川と出逢ったそうです。「東京とは思えない自然豊かな環境に衝撃を受けた」と語る古畑さんの声には、多摩川への愛情がつまっていました。
co-lab二子玉川には、古畑さんと同じように家族と共に二子玉川地域に暮らすメンバーが多く、共感の眼差しで古畑さんのプレゼンテーションを静聴している様子は、この夜いちばん印象的なシーンだったかもしれません。
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▶︎あとがき
2011年の設立以来、およそ8年が経過したco-lab二子玉川は、現存するco-labの中ではもっとも長く運営されている拠点です。
そんなco-lab二子玉川で行われた春のプレゼン会を振り返ると、二子玉川という街の発展とともに、少しずつ築き上げられてきた『co-lab二子玉川らしさ』を体現するような新メンバーにご登壇いただくことができたような気がします。
また、『デザイン x 多摩川 x ネクストジェネレーション』といったキーワードを想起させた一夜は、co-lab二子玉川ではじまる新しいコミュニティの広がりを感じさせるとともに、長年在籍しているメンバーにとっても春風のように爽やかなインパクトがあったようでした。
そして、、、
冒頭でもご紹介した通り、co-lab二子玉川のプレゼン会は集まるco-labメンバーのほとんどがご家族と一緒に参加してくださいますが、1時間以上も続く真面目なプレゼン会の間、子どもたちはどこにいるのか??
実は、子どもたちはco-lab二子玉川のプレゼン会場で毎回新たなお友だちを増やしながら、みんなで一緒に遊んで夜を過ごしています。
(花束を持つ子どもたち/春のプレゼン会はちょうど保育園などの卒業シーズン)
(子どもたちに大人気のお兄さんもco-lab二子玉川に所属するデザイナー)
時には絵本を読み聞かせたり、ボードゲームで遊んだり思い思いにのびのびと過ごす子どもたちの姿があるから、パパやママでもあるco-lab二子玉川メンバーもゆっくりとプレゼン会に参加できるのでした。
そして、先月7月には夏のプレゼン会も開催しました!
次回のプレゼン会イベントレポートも、どうぞご期待ください。
(ローカル・マネージャー/co-lab PR : 鳥井)