REPORT
クリエイティブ思考によるポストコロナの解法 #1 都市テクノロジーの変化
co-lab会員の方を登壇者にお招きした全4回に渡るオンラインイベント「クリエイティブ思考によるポストコロナの解法」。2020年5月12日に第1回目となる対談を後藤太一氏(リージョンワークス代表社員/都市プロジェクトデザイナー)と本丸達也氏(リベラ代表/AI・IoT・都市テクノロジー開発者)をお招きして行いました。
モデレーターを弊社田中が務めた本対談は、各氏のレクチャーとディスカッションという構成で行いましたのでその様子をお伝えします。
後藤氏からは
○政策への反映・科学的根拠・集合知・着眼大局・着手小局という4つのことを必ず踏まえようとしていて、ポストコロナの議論において実はまだどれも煮詰まっていない
○感染症と都市の歴史のおさらいをした上で、感染症が都市を必ずしも劇的に変えるとは限らないので冷静に見た方がいい
○感染症という自分のせいではないものに襲われて動けなくなったとき、人間の本性がむき出しになるのはたぶん変わらない、我々人間が今まで通り本能的に動こうとするときにどうやむを得ず適応するのかと考えたほうがいい
○元々都市はどうあったらいいのかという構想があって、それを下敷きにして目の前のコロナの課題を解くようにしているのではないか。例えばパリは、「15分で行ける街」計画を発表していて、これを発表したのはコロナが深刻化するより前の1/21なのでコロナとは関係がない
○都市空間というのは「弾力性」が大事で、しなやかな構造を持つ都市空間の再配分というものを今までの仕事を念頭に作っていくことができないかと考えている
○テクノロジーは市民がものを考えていく力を与えるツールとして使うべきで、コンクリートと鉄とでできているというイメージのテクノロジーではない、もっとしなやかなものがこれから議論されていったらいい
というような、ポストコロナについて皆で一緒に考えていく視点を提示していただきました。
本丸氏からは
○自動運転のターゲットは当面の間は人よりもまず物であって、物流がターゲットになっている
○経済、空間、QOL(ヒト)という3要素の総量が一つの都市の営みであり、その中で多くのステークホルダーが活動している
○リアルに活動する都市と仮想都市。この2つの鏡像の中で動いているというのが都市経済。実価値に対して仮想の方がバリューを上げていくということが今後起き得るかもしれなくて、それを対称性の破れと呼んでいる
○スマートシティは多くの人たちが関わっており、日本だと実例がないので進めるのが難しい。日本はコピー・ペーストであったりすり合わせは得意だが、汎用的なもので作っていくことに関して、特にソフト産業はそこまで盛んではない
○オンライン授業になっても意外と皆追随していて、この辺りは今まで起きていなかった。10年20年というディケイド単位で起き得ると諦めていたところが一気に起きたというのは、何らかの形で色々なところが刺激し合うかもしれない
○リニア開業により、BCP(事業継続計画/Business Continuity Plan)の観点も含めて、名古屋と東京のツイン化という動きが今後出てくるかもしれないので、地域オフィス・住環境の改善・教育・地域医療の充実などが前提にはなるが、ここに1つヒントがあるかもしれない
というようなAIやスマートシティなど未来への示唆を提示していただきました。
後半のディスカッションでは本丸氏からの
「後藤様は今東京を離れて福岡に住んでいる、東京にまた戻られて今のこのタイミングで色々なアクションを起こそうと思うのか、もう戻らないのかというところをお聞きしたい」
という投げかけに対し後藤氏の、
「人によってどこに住みたいかは違うし、違ったほうがいいと思う。私は今福岡が快適ですけれども、別に東京でも暮らせると思いますしヨーロッパでも暮らせると思います。今回のコロナで、仕事の内容とか家庭環境とかでそんなに簡単に動けないという人が世の中に多いというのがわかったと私は思いました。ただ、選択肢が増えていくのが今回見えたのはすごい良かったと思ってます」
という回答や、後藤氏からの
「”余白”という概念が今すごく大事なんじゃないかと思っていて。都市にも遊びが必要な部分があるし、ビジネスの経営にも余白の部分が必要、それがない生き方や経済の仕組みというのは息苦しい」
「丁寧なご質問をいっぱいいただいてて、考えるきっかけになってありがたいんですけど、前提条件をもう1回外して考えたほうがいいんじゃないかなと思うものがいくつかあった」
という問いかけがありました。
最後に田中氏から
「お 2 人ともデータに基づいてお話をされているので非常に理解しやすく、納得感がすご く高かった。後藤さんからの歴史的にみると感染症で都市が劇的に変わらないかもしれないが、本能的に動き出し、結果余白のある場を求めるようになるというお話しと、本丸さんからのAIやスマートシティなどのポストコロナの未来への示唆をいただいたが、どのテクノロジーもコロナによって刺激され進化するというお話しを伺い、コロナでの一時的なダメージはあっても結果的には、人類の本能に従順に、そして加速度的に社会を発展させる要因になっているのではないかとポジティブに感じることができました。」
という言葉で閉会しました。
(アシスタント・ディレクター:生田目)