REPORT
クリエイティブ思考によるポストコロナの解法 #2 ソーシャルソリューション
co-lab会員の方を登壇者にお招きした全4回に渡るオンラインイベント「クリエイティブ思考によるポストコロナの解法」。2020年5月21日に第2回目となる対談を上田壮一氏(Think the Earth理事/プロデューサー、プロジェクト・ディレクター)と佐藤ねじ氏(ブルーパドル代表/プランナー、アートディレクター)をお招きして行いました。
第1回に引き続きモデレーターを弊社田中が務めた本対談は、各氏のレクチャーとディスカッションという構成で行いましたのでその様子をお伝えします。
上田氏からは、『Think the Earth』ウェブサイト上のブログ「コロナ後の世界を考えるための切り口」に沿いながら、
○コロナのように自分が動くことが人の命も危険にさらすという状況に追い込まれると、実はここまでの行動変容ができるということを考えると、気候危機に対しても何かやれることがあるのではないか。
○今これだけリーダーが注目されている時代もないと思う。そこで僕らが尊敬できるリーダーとはどう行動するのだろうかということを学ぶチャンスになっている。
○サイエンスの知識がすごく重要、これを理解するかしないかでリーダーのあり方や政策のやり方も変わってくるし僕らの想像力のあり方も変わってくる。科学は非常に重要なリテラシー。逆に言うと、科学者たちの意見についてきちんと聞くということも大事。
○見えない世界をどうやって可視化するかということもすごく重要で、見える化の効力というのはクリエイターの人たちができるところ。
○ネガティブ・ケイパビリティという言葉が最近気になっています。人はどうしても早く答えを出そうとする。本当の創造性は性急に結論を出さずに、不確実さや不思議さ・疑いの中にいることができる能力であるといっている。無理をしないで今のこの状況の中でじっと静かにしている、クリエイティブとはもしかしたらそういう力がすごく大事なのではないか。
というような、ポストコロナについての様々な視点の提示と整理をしていただきました。
佐藤氏からは
○僕はビジョン・考え方としては「0→0.1_を発見する、という。ブルーオーシャンのようなものは作れないけど、小さなパドル、水たまりという意味なのですが、小さな発見をいっぱい刻んでいくようなことがとても好き。
○すごく大事にしているのは、自分の容量で考えるということ。ニューヨークや世界はどういう状況なのかという情報は仕入れるのですが、それにそのまま全部反応するとそれだけで疲れてしまう。自分が影響できる部分にフォーカスしようということは考えている。
○未来人視点で考えるということを思考法としてやっていて、コロナに限らず、10年後や5年後の人の視点で考える。10年後で考えると、そのときに何をしていたら面白かったのか・よかったのか、と考えるようになった。
○カメラに向かって話しているととても疲れるのですが、カメラからすごく離れて話すと空間に対してものを話す感じになる。そういうことをいろいろ発見していくことは面白いし、全然違うデザインやプロダクトが生まれることがあるかもしれない。
○ぐっと下げてからネガティブ・ポジティブ思考と呼んでいますけど、ぐっと下げて最悪のことを考えた上でポジを考えるという思考法が自分の中にある。ネガティブな視点でもあるのですが、放っておくと逆に普通でいられるというのは、結構こういうときには効くのではないか。
というようなコロナ禍に有効なアイディアをご紹介いただきました。
後半のディスカッションでは佐藤氏からの
「クリエイター系の人に関していうと、みんな個々には動いているのですけどシナジーのようなものがもっとうまくつくれるといいんじゃないかなと思っていて。もうちょっとタスク分解ができるようなものがあるといいのかなと。」
という投げかけに対し、上田氏の
「今社会全体で言えばバグ出しみたいな感じ、このプログラムはある条件の下ではすごくうまく動いていたけども、条件が変わったら全然動かなかったということが今分かっていて、みんなでそれを整理する段階。」
という回答や、
【上田氏】「(左上図について)僕らはお金が中心の日常Aで生きていた。今は日常B、確実に命が中心価値になっている。新しい日常とは日常Bのことをいっている感じがする。この先に来る日常A’を考えることがとても大事、このときは命と地球と経済のバランス。SDGsも含めて配慮をした新しい生活様式をどれだけ今考えられるか。(右上図について)今僕らは緊急事態の中にいて、日常Aに戻るのではなくて日常A’に進むとして、でもまたいつか緊急事態がやってくる。日常A’と日常B’をどうデザインできて、瞬時にこの2つを行き来できるような暮らし方や政策を考えることがとても大事なのではないか」
【佐藤氏】「これは面白いし、SDGsの視点で考えると、このタイミングでしかやるチャンスがないのではないかと思うぐらい、1回仕切り直せるタイミング。」
【上田氏】「行動の10年って、これから先はめちゃめちゃ行動しなきゃ間に合わないというのが国連で採択されている、日常Bからどちらに戻るかということを見極めて、SDGsが達成できるアイデアをこれから出していかないといけない。」
といったディスカッションが行われました。
最後に田中から
「上田さんは普段社会を編集するような視点でお仕事をされているということもあると思うのですけど、各方面で気になっていることを列挙することで見えてきたり、心が浄化されたりするようなところがありました。また、佐藤さんのような身近なアイデアがそのままポストコロナ時代に残っていって、それが標準化するようなことがどんどん起きてくる感じがありました。今回のコロナはインパクトが大きすぎて、まずそれを受け入れるのに時間がかかっていますよね。やっとそれを咀嚼して自分なりに何ができるかということを考えられるタイミングが来ているような気がしています。お二人の普段の思考の仕方や行動を拝見していると、その延長で、このタイミングからやれることがすごくあるような気がしました。」
というコメントで閉会しました。
(アシスタント・ディレクター:生田目)