クリエイティブ思考によるポストコロナの解法 #3 メディアテクノロジーが開く未来

co-lab会員の方を登壇者にお招きした全4回に渡るオンラインイベント「クリエイティブ思考によるポストコロナの解法」。2020年5月27日に第3回目となる対談を水口哲也氏(Enhance代表/プロデューサー、クリエイター)と佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE代表取締役/戦略デザイナー)をお招きして行いました。
第1回、第2回に引き続きモデレーターを弊社田中が務めた本対談は、各氏の本テーマによるプレゼンテーションとディスカッションという構成で行いましたのでその様子をお伝えします。

水口氏からは
○たくさんのパーティクルが音楽に合わせて連動しながら動くのを自分の体験として作り上げていく。効果音がどんどん音楽化してビジュアルと絡み合ってストリーテリングを自分が生み出していく体験。これを3Dでフレームのない世界で体験することによって感動の深さがより深く設計していける時代にようやく入ってきた。

○日常生活の中での体験を通じて感動するというのは、複合的な感覚が融合したところに起こる体験が必要。そういうことを深く掘り下げるために今いろんな方々と組んでやっていて、人間がボディ中心になってそれを取り巻く空間と意識。これ全て含めて共感覚的な研究みたいなことが必要。

○情報の時代が終わって体験の時代で共感覚的になって、二次元の視覚も終わって三次元が空間の中に混在してくると非常に人を幸せにするようなことが始まるのではないか。
○次の20年ぐらいで人間の目で判別できる解像度を超えてくる。そうなった時にこれ以上のテクノロジー・ビジュアルディスプレイが必要なくなる。でも何かに向けて進化していくとすれば、それは感覚移入ではないもっと深い感情移入・感動体験することじゃないか。
○ネガティブ、憎悪、ヘイトが増幅してるというのは、逆に言うと全部マイナスをプラスにする力もあると思う。マイナスの感情がもし全部プラスの感情としてやった時に何かが起こるはず。文句言うよりもありがとうを先に言う。単純なところから化学反応起こして大きくなっていく。「ありがとう」「ほんと助かったよ」と声かけられるだけで幸せな気分になる。
というような、メディアテクノロジーにまつわる体験について様々な提示をしていただきました。

佐宗氏からは
○コロナで起こった変化、過度な何かのリバランスみたいなキーワードが出てくる、経済成長こんなスピードでいいんだっけとか、働く時間こんなに長くていいんだっけとか、こんな多くの人と付き合ってる必要あったんだっけとか。過度なものをいったん戻す漢方みたいな感覚を持てた時期だった。
○日本人は外のコミュニティだったり社会に合わせて自分を変化させる考え方が強いのに対して、ポストコロナ時代は自分がまず何か出さない限りほっといたら何も起こらない。比較的役割だけで仕事をしてた人でも少し自分性が出てきていると感じる。
○ハレの楽しみとケの楽しみがあって、基本ハレのアウトサイドインのものは密のものが多い。インサイドアウトなケのところ、ある意味内向的なものに一時的に今皆さんの意識が向いてると思う。これはべつにケに限らずハレ的なものでもインサイドアウトなものとか今すごく可能性が出てくるんじゃないか。

○インサイドアウトの時代におけるメディアの1つの切り口として思ってるのが、自分自身が考えていることを振り返るものとしてのメディア。それによっていろんな反応が起こって結果的に自然発生的にコミュニティが生まれて、そこから新しい自分の制作にもう1回つながっていく。自分の中を掘っていく、鏡としてのメディアみたいなものにこれから可能性がありそう。
○ビジョンのアトリエっていうのがありまして、自分の目に見えない価値、目に見えない面白いものっていうのを潜って、妄想して内容の解像度を知覚して組み替えて表現していく。自分自身だけが持っている価値観と向き合える、こういうアトリエが必要じゃないか。
というようなコロナ禍に有効なアイディアをご紹介いただきました。

後半のディスカッションでは水口氏からの
「感動する装置って昔は教会。最近だとシアターに変わって。僕はまた教会的ことに戻るんじゃないかって気がしてて。昔は人の手によるアートの集合体によって可能になる体験。もちろん、そこに神という者がいて。脈々と続いてきている教えとかストーリーと一体化しているみたいな。」
という投げかけに対し、佐宗氏の
「宗教って僕も今テーマで。大いなるものと繋がっている感じをどう感じるか。要は自分自身とだけ向き合い続けて生きるの大変なんですよね。分散していくということは逆に大いなるもので繋がっていくものがないとバランスが取れないはず。神性みたいなものを感じられる体験ってなんだろうということは少し考えてみたい。」
という回答や、
【水口氏】「手塩にかけて育てたリンゴとか、自分がわざわざ通って育てた米とか。そういうものに価値が出てくる流れ。量産でガンガン作る物とはちょっと違う何か。そういうのってデジタルとの相性は良いんですよね。」
【佐宗氏】「まさに手塩にかけて作るって価値があるし、愛おしいよねっていう感覚をいかに広げられるかという問な気もしてて。結局分散化して自分で刺激を作ろうっていう方に行くはず、その刺激の向かう先が何かを作るという行為になっている。消費者から造り手に戻っていくライフスタイルが当たり前になれば、次の世の中はよく回るようになるんじゃないか。」
といったディスカッションが行われました。

最後に田中から
「今回コロナの影響でみんながオンラインに慣れて体感的なものが欠落してる中、水口さんは長年VRを自ら作るところから始まって今たどり着いてる3つの要素(感動・心の豊かさ・多幸感)が一番大事だという話がリアルに社会に求められている。心の豊かさみたいなものをどこかで今まで気づかなくて、ずっと何となく押し殺していたものにみんな気づいてしまって。佐宗さんからもお話があったように、そこまで経済活性化する必要本当にあるのかとか。整理された情報である程度あればまあそれでいいんじゃないかとか。そういう適度みたいなものをやっと、このゆっくりした時間があったからみんな気づけた。」
というコメントで閉会しました。

(アシスタント・ディレクター:生田目)